研究概要 |
本研究は、模型シミュレータのヘッドマウントディスプレイに、CGによって生成された人、自動車などの動的な要素の画像を合成表示するシステムを開発し、これを用いた経路認知(記憶と再認)についてのシミュレーション実験を行い、従来の固定的環境要素のみによる実験結果と比較することによって、動的な付加的要素の効果を明らかにすることを目的として行われた。本年度は、前年度までに画像合成などの改良を行ったシミュレーション装置を用いて、街路の動的環境要素として歩行者の流れや滞留が場所の印象評価および記憶に及ぼす影響に関する実験を行った。その結果,先ず街路空間の雰囲気の変化についての印象評価については,従来の模型だけの場合に比べて人や車が介在する事によって,それらの視覚的なノイズにより建物のセットバックによる空間の広がりの変化や高低の変化があまり影響されず,また逆に模型で提示された物理的な空間構成からは変化が認められなかった場所が人の流れによって分節化されるといった,実際の場合とより近い評価が得られた。次に街路の記憶に関しては,多くの人が人の流れや滞留を経路認知の手がかりとしていること,したがってそれらが変化することによって迷いが生じること,また滞留する人々の存在によって,その場所の意味付けが強化され,記憶されやすいことなどを明らかにした。なお,これに用いた装置および前半の実験結果について、建築シミュレーションに関する国際会議(第4回EAEA、ドレスデンで1999年9月開催)において研究成果を発表した。
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