研究概要 |
震災後4年目にあたる平成10年度は,神戸市都市計画に根ざす成長主義的方策が理念的にも実際的にも大きな壁に直面した時期であった。震災復興計画に盛りこまれた大型開発プロジェクトが次々と破綻し,また被災地復興のメルクマールとなる人口回復が遅々として進んでいない。 人口回復の遅れが消費購売力の縮少となって地域経済の回復を遅らせ,それがまた雇用の減少となって人口回復を阻んでいる。 広原はこのような被災地復興の遅れが過大な震災復興計画に基く神戸市都市計画の理念と手法に起因しているとの認識から,復興計画の策定に決定的な影響を与えた阪神・淡路震災復興委員会の未公開議事録の分析を通して,その策定プロセスと問題点を解明した。 安藤・塩崎は,大型開発プロジェクトの中でもとくに過大だとされる長田地区市街地再開発事業の事業プロセスを同時進行的に丹念にフォローし,当事業においては高層建築化によって余剰床を生みだし,その売却によって事業費を捻出するという従来手法が現在及び将来にわたって完全に破綻することを分析している。 池田は,被災地復興の遅れの原因に,住宅等被災住民の生活被害に対する公的援助の不十分さがあるとの問題意識から,公的援助の基礎となった建築物等の被害類の策定方法の再検討を行い,公表された被害額は政策的に過少に試算されたことを分析している。
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