前年度の成果に基づき、高山市三町伝建地区の100戸の住戸に設置されている災害情報ネットワークを対象とする研究を行った。本地区の前年度調査では、災害情報ネットワークの受信機等の要素装置が、一般住民には操作が困難であることが指摘されていた。この問題は、前年度に、一部のモニタ住戸で高齢者等の災害弱者を対象とする事故・急病情報を付加した装置についても指摘された。従来のビル等の防災設備は、訓練を受け、専門的知識を有する建物管理者等が操作していたのに対して、開発中のシステムは一般住民が使用するため、操作の容易性が重要な課題であることを示すものであり、今年度は、既設置の装置の改造を最小限に抑えられる範囲で、機器の操作方法と操作部を再設計し、その効果のモニタ調査を開始した。 設計は、一部の住戸を対象に、操作方法を改良しながらその効果をモニター調査によって評価するという試行錯誤的な手順で進め、対象地区代表者との合意が成立した段階で、全住戸の要素装置を改造し、操作方法の表示等を全面的に交換した。再設計の内容は、主として下記の通りである。 1.火災等の非常時には、装置の表示の視認のみに基づいて釦を操作すれば、誤りなく異常の発信と取消ができること 2.操作方法自体の整理と単純化 3.操作方法の表示と操作内容の具体的な関係の明確化 4.非常時に必要としない操作内容の表示を機器から排除すること 5.高齢化による視覚機能低下を考慮した表示の色彩設計 6.日常管理・故障対応等を含む一般管理内容のマニュアルのわかり易さの向上 今回の装置の改造に際しては、全住戸を対象にネットワークの効果について書面によるアンケート調査を実施した。その結果は、上記の趣旨に基づく操作性の設計が、誤作動の防止に効果をあげていることを示している。本モニタ調査は平成12年度により詳細に実施する計画である。
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