研究課題/領域番号 |
10450229
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
長谷川 雅幸 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (80005975)
|
研究分担者 |
湯蓋 邦夫 東北大学, 金属材料研究所, 助手 (00302208)
永井 康介 東北大学, 金属材料研究所, 助手 (10302209)
唐 政 東北大学, 金属材料研究所, 助手 (80271972)
|
キーワード | 陽電子消滅 / 電子運動量分布 / 黒鉛 / 原子空孔 / 魔法数 / 空孔・不純物 |
研究概要 |
原子空孔(クラスター)およびそれと不純物の複合体を、内殻電子と陽電子を利用して同定するために、2組の半導体検出器を用いた同時計数ドップラーブロードニングシステムを完成させた。これによって、従来からの角相関装置と合わせて陽電子・電子運動量をの広い範囲に渡って測定できるようになった。このシステムを用いて、黒鉛中の空孔クラスター、電子線または中性子照射したシリコン、中性子照射したバナジウムや鉄などについて測定を行い、魔法数原子空孔クラスター、空孔と不純物複合体について、興味深い結果が得られた。ここではその内の顕著な結果である黒鉛中の魔法数空孔クラスターについて述べる。 シリコンなど共有結合材料に対して、“原子の抜けた"空孔の集合体にも魔法数が存在し、ある数からなる集合体が特に安定であろうと予想されている点に注目する。原子核中の中性子や陽子数、原子クラスターと同様に、負の原子とも見なせる原子空孔の集合体に魔法数があるとすれば、それは、科学的意義とともにボイド形成などに重要な役割を果たす可能性を持つ。 中性子照射した高配向性熱分解黒鉛について、陽電子・電子運動量分布(陽電子の運動量は殆ど零なので、実質的に電子運動量分布と見なせる)、陽電子寿命を測定し、それぞれの実験から、中性子照射によって、単空孔よりも十分大きな空孔クラスターが形成し、陽電子を捕獲することを明らかにした。これらの実験結果にに対応する第一原理計算を行い、中性子照射欠陥は結晶構造の基底面内の6員環が抜けた6員環空孔であることを示した。この六員環空孔は、重照射の広い線量領域で存在しつづけること、1500℃の高温でも存在すること、理論計算からも安定なクラスターであることから、魔法数空孔クラスターであることが分かった。空孔に関しての魔法数の存在を実験的に示したのは本研究が初めてである。
|