研究概要 |
本研究は結晶構造内に空洞や細孔(層状)を有する典型元素の錫系複酸化物の探索研究に関する。前年度において,新規に合成されたトンネルをもつホーランダイト型構造のK_xMgSn_7O_<16>を対象として、さらにKの割合Xが自在になるプロセッシングの可能性について検討してきた。本年度はトンネル骨格へBi^<3+>などをSn^<4+>の代わりにドーピングを行い電子伝導性を付与することにより,イオン伝導の対するポテンシャル障壁が低くなることを期待して,構造特異性をもつ新規物資の合成研究,ならびに高いイオン伝導性を得る材料設計に関する検討を目的とした。 そこで,層状あるいはトンネル型など特異な結晶構造をもつ錫系複酸化物の合成とその特性評価に関する研究を以下のとうりに行った。 1)錫系複酸化物,K_xMSn_7O_<16>(M=Mg^<2+>,Ca^<2+>)においてK^+の含有量が0〜2の広範囲に変化させる方法についてBi^<3+>系固溶体などを対象に検討し,トンネル骨格中で三価の元素がSn^<4+>に置き換わった化合物を相図を作製しながら,この作製した相図に基づきいて探索した。 2)粉末X線回折や電子線回折図形などのX線回折データと結晶構造解析シミュレーションを用いて,結晶構造中のサイトプリファレンスなどの情報を得て,合成された物資の詳細な構造を明らかにした。さらに,赤外吸収スペクトル,可視紫-外吸収スペクトルあるいはラマンスペクトルなどの分光学的手法を用いて,結晶構造中の局所的な対称性や配位状態について検討した。 3)イオン伝導や電子伝導などの電気的性質を評価するため,本研究で得られた新規錫系複酸化物に対して,フラックスなどを用いた結晶成長を検討した。成長させた結晶は元素分析や相同定を行ったのち,誘電率あるいはホール係数などの電気的性質に関する測定を詳細に行った。
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