研究概要 |
機能性セラミックスでの粒界不純物は単結晶に見られない様々な特性を導くために,本質的に重要である.構造用セラミックスにおいても,例えば窒化ケイ素では,適切な粒界不純物を導入することで粒界強度を制御し,高靭化と高強度化が達成されている.この粒界不純物の存在は古くから仮定されていたが,近年高分解能の電子顕微鏡像観察とサブナノプローブでのEELS技術により,粒界結合状態が直接解明されつつある.本研究では,EELS法により粒界偏析不純物の化学結合状態を系統的に調べることを目的として行っている. 本年度は,まずSiを不純物として添加したMgOセラミックス焼結体の,酸素についてはK励起端,マグネシウムおよびシリコンについてはL23励起端でのEELS実験とその理論計算によって,とくにその化学結合状態について詳細に調べた.EELS実験は,現有の電界放射型電子銃付きの透過型電子顕微鏡を用いて,イメージフィルターを用いて行った.また理論計算は,2体間ポテンシャルを用いた格子静力学計算による構造をもとに,DV-Xα法による第一原理分子軌道計算を原子数100前後のモデルクラスターについて行った.この計算は,本予算で購入のスーパーパーソナルコンピュータによって挙行した.その結果,理論計算で予測されたような歪んだ6配位サイトを占有するSiの存在が示唆された. 現在,上記のようなEELS実験は世界中のグループがしのぎをけずって研究に取り組んでいる.本申請者らは近年,DV-Xα法による分子軌道計算が,EELSの解釈に極めて有用であることを報告しており,この点において世界をリードしている.
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