研究概要 |
カーボン60(C60)やナノチューブなどのフラーレンを,セラミックスや金属と複合させるための基礎的な実験を行った.C60を,ジルコニアとチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)に,溶液法によって複合させることを試みた.C60をジルコニアと複合させるための方法として,硝酸ジルコニウム水溶液において,C60を核とするミセルを形成させ,ジルコニアマトリックス中にC60を均一に分散させることを試みた..オキシ硝酸ジルコニウム2水和物の水溶液に,界面活性剤C_<16>TMAおよびC60粉末を添加溶解して,沈殿(Zr(OH)_4)を得た.この沈殿を大気中で400℃,3h熱処理することによって,C60を含むジルコニア粉末(ZrO_2-3mass%C_<60>)を得,さらに,この粉末を5.5GPaで600℃および900℃2hの超高圧ホットプレスを行い,バルク試料を作製した.600℃の焼結体表面のFT-IRスペクトルから,C60がジルコニアマトリックス中に残存していることが明らかになった.また,SEM-EDX分析の結果,均一な炭素の分散が観察され,C60がジルコニアマトリックス中に一様に取り込まれていることが示唆された.TEM観察において,C60の析出は観察されなかった.C60とPZTとの複合は,酢酸鉛-ジルコニウム及びチタンのアルコキシドからなるPZT前駆溶液中にC60を溶解させたものを,シリコン基板上にコーティングして400℃〜600℃で焼成することによって,C60添加PZT薄膜を作った.従来よりも200℃低い温度でペロブスカイトが生成するという画期的な結果を得た.フラーレンと金属との複合においては,C60とアルミニウムの系,ナノチューブとチタンの系を対象として,ボールミルによるメカニカル混合による複合粉末の作製と,複合粉末のホットプレスを行った.C60をアルミニウムに複合させた試料は,グラファイトをアルミニウムに複合させた試料に比べて,より大きな破断強度を示した.ナノチューブ-チタン系については,ホットプレスのための複合粉末作製法の最適化を行った.
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