研究概要 |
フラーレン(C60およびカーボンナノチューブ)を,チタン酸ジルコン酸鉛(PZT),アルミニウムおよびフラーレン自身と複合させる研究を行った.PZTとC60の複合体は,C60のトルエン溶液をPZTのコロイド溶液に添加して得たPZT-C60複合ゾルをPt-Si基板上にスピンコートし,これを,400℃〜500℃で大気中で焼成して薄膜として作製した.高分解能透過電子顕微鏡によって観察した結果,ナノサイズのポリマー化したC60がPZTマトリックス中に分散していることが分かった.これは,導電性のC60ポリマーが複合されていることを示唆するので,高い誘電率がもたらされることが期待される.界面活性剤のC16TMAを用いてのミセル形成法によりC60とジルコニアと複合させた場合は,400℃の焼成によって,ジルコニア粉末中にC60を破壊することなく取り込ませることが可能となった.また,この粉末を5.5GPaで600℃で超高圧焼結することによって,ジルコニア-C60複合体を作製した結果,フーリエ変換赤外分光によって,C60が残存していることが分かった.C60の一部は分解して,ジルコニア粒子の表面が,グラファイトや非晶質カーボン膜で覆われていることが,高分解能透過電顕観察によって明らかになり,高い潤滑特性を示すことが期待された.このフラーレン-ジルコニア複合体は,マイクロ硬度計によるインデンテーション検査により,塑性変形することが分かった.フラーレンと金属の複合については,メカニカルアロイングによって,C60とアルミニウムとの複合を試みた結果,C60がナノサイズでアルミニウム母相中に取り込まれることが見出された.さらに,ナノチューブとC60との複合体を高圧圧縮によって作製したところ,内壁が圧着されたナノチューブが見出された.
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