本年度は、平成10年度に確立した手法を用いてAl_2O_3およびSiCマトリックス系複合材料の真実接触部に生じるミクロなせん断滑り応力とプッシュバック試験から求められるマクロなせん断滑り応力との相関性を記述する方法を検討し、真実接触面積の考え方が有効であることを検証することを目的とした。同時に、レボルバ取付き型操作プローブ顕微鏡を用いて真実接触部での摩擦力を求めせん断応力へ変換した。また、異なる複合材料種間での滑り応力を比較するために、それぞれの材料での真実接触部分でのミクロなせん断応力を求めることが必要であり、測定時に繊維が円形(直径100〜140μm)でありプッシュアウト試験時につき出した部分(長さ30〜100μm)の凹凸を測定するために特殊形状に対応できるプローブ顕微鏡を用いた。ガラスマトリックス系複合材料をモデル材料として、ガラスの化学組成を変えて熱応力およびポアッソン比の差により生じる繊維半径方向の締め付け力を変化させた試験も行った。その結果、界面の凹凸形状や半径方向応力が異なる材料系でも、真実接触部での摩擦力から得られたミクロなせん断応力とプッシュバック試験結果から求められたマクロなせん断応力の間に相関性が見られた。この結果から、真実接触面積を用いた界面せん断滑り応力の定量評価が可能と考えられた。
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