研究概要 |
本年度は高温構造材料として既に実績のあるC/C複合材料を測定対象としてシャルピー衝撃試験を行い,破壊エネルギー評価と亀裂進展のその場観察を試みた.衝撃試験に先立ち,シャルピーハンマーにロードセルを取付けて試験時の荷重ー変位曲線を評価できる計装化システムを構成し,その曲線が囲む面積から破壊エネルギーが評価できるようにした.用いたペンジュラム衝撃試験機はチュアスト社のRESIL25である.その結果,炭素繊維が1方向に配向したC/C複合材料と2方向に配向した炭素繊維が積層したC/C複合材料とでは大きく破壊様式が異なり,前者の方が後者に比べて破面から引抜けた繊維の量(数×長さ)が大きい事が分った.更に,1方向強化C/C複合材料の破壊エネルギーは2方向強化材の約5倍もの大きな値になった.これは試験片をエッジワイズの方向に破壊させた為,1方向強化C/C複合材料の方が2方向強化材よりも層間剪断強度が小さく,破壊の際に亀裂進展方向と垂直な繊維引抜けが生じ易かった事に起因すると考えられた.しかし,ハンマー及び試験片自体の振動が荷重ー変位曲線に重畳してしまい,最大衝撃荷重や破壊エネルギー値に影響を及ぼす事が懸念されたので,その問題点の解消を来年度の検討課題とする予定である.一方,衝撃試験時に於ける動的亀裂進展のその場観察を高速ビデオカメラ(レッドレイクカメラ Motion Scope HR200)を用いて試みたが,予想した以上に亀裂進展速度が速く,進展過程を上手く撮影できなかった.より高速度なカメラを用いる等の工夫をして来年度には動的進展亀裂の撮影を成功させる予定である.本年度は繊維配向の異なるC/C複合材料の衝撃破壊挙動の違いを検討したが,来年度は層間剪断強度の異なる1方向強化複合材料で衝撃破壊試験を行い,材料の力学的特性が破壊エネルギー及び衝撃破壊挙動に及ぼす影響について検討したい.
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