研究分担者 |
飯久保 知人 大同特殊鋼(株), 技術開発研究所, 特殊鋼研究部長(研究職)
半田 康延 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 教授 (00111790)
星宮 望 東北大学, 大学院・工学研究科, 教授 (50005394)
成島 尚之 東北大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (20198394)
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研究概要 |
機能的電気刺激(Functional Electrical Stimulation:FES)に使用する生体内長期埋め込み電極用の合金に関する研究を行い、以下の成果を得た。 1.新合金の設計:新合金設計のためのデータベースを整備して生体親和性、機械的強度、耐食性、磁性、加工性等の観点から合金組成を検討し、ニッケルの代替としてマンガン、窒素を添加し、クロム、ニッケル量を調整したオーステナイト系ステンレス鋼数種のインゴットを試作し、得られた新合金の加工率と引張強さ、延び、絞り等の関係を検討した。その結果、マンガン6%,ニッケル10%,クロム22%,モリブデン2%,窒素0.4%という組成を持つ合金(以下NAS106N)が最も極細線の製造に適する事を確認し、この材料で生体埋め込み電極用の極細線ワイヤーロープを試作した。 2.新合金で作製した生体埋め込み電極の評価:新合金NAS106N,従来より生体埋め込み電極に使用されているオーステナイト系ステンレス鋼SUS316L,従来歯科材料等に使用されているコバルト・クロム基合金NAS604PHの3種の合金で製造した電極用ワイヤーについて、磁気ヒステリシスの測定を行ない、NAS106NおよびNAS604PHでは強磁性相がほぼ存在しない事を確認した。さらに、大気中および生理食塩水中での回転曲げ疲労試験の結果から、大気中および高応力条件下の生理食塩水中ではNAS106Nの耐疲労性が最も優れている事を確認した。しかし、試験時間の長い低応力条件下では擦過腐食の影響により、他の合金と同程度の寿命となる事も判明した。また、有害元素であるニッケルイオンの溶出はNAS106Nで最も少ない事を確認した。 以上を総括すると、本研究で開発した新合金NAS106Nは生体内長期埋め込み電極用合金として従来材に比較して極めて優れた性質を有するが、擦過腐食に関する特性改善が今後の課題と考えられる。
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