| 研究概要 |
1.目的 希土類-鉄系硬質磁性化合物において、HDDR現象およびナノコンポジット磁石は高性能ボンド磁石用粉末作製法として期待されている。最近の我々の研究により、HDDR処理したSm_3(Fe,V)_<29>化合物(3-29相)はSm(Fe,V)_7化合物(1-7相)とαFeに再結合することが判明した。本研究では、本系化合物をHDDR処理後窒化すればナノコンポジット磁石作製の可能性があると考え、処理条件等を検討した。昨年度の結果を受け本年度は、組織微細化効果のあるCoを添加した3-29化合物の磁気特性および組織に及ぼす処理条件の影響について調べた。
2.実験方法 Sm_<9.4>Fe_<84.6-X>Co_XV_<6.0>(x=0,10,20,30)を選んで高周波溶解、800-1100℃50時間の均一化処理、粗粉砕した後、圧縮成形してペレット状試料とした。その後590〜750℃でHDDR処理、560℃で窒化した。磁気特性はVSM、組織観察にはSEMおよびTEMを用いた。
3.結果 本年度得られた結果をまとめると以下の様になる。(1)水素雰囲気中における再結合反応開始温度はCo量が多いほど低下し、低い温度で再結合反応が起こることがわかった。(2)20%Co合金において高温短時間の熱処理ほど高保磁力が得られ、700℃20分間の熱処理によって高い保磁力が得られた。(3)750℃10分間の再結合処理した試料においてM_<1.2>=140μWbmkg^<-1>,Mr=77μWbmkg^<-1>,iHc=411kAm^<-1>なる本研究中最も高い値が得られた。
(4)630℃以下の再結合処理では1-7相とα-Fe以外の相が出現し、この相の出現により保磁力、残留磁束密度とも低下すると考えられる。(5)630℃、700℃で再結合した試料ではTEM観察により前者では20-50nm、後者では100nmからの結晶粒から構成されていることがわかった。(6)ヒステレシスループにくびれが見られることから1-7相とα-Fe相間の交換結合は弱いと考えられる。
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