研究概要 |
本研究の目的は,鉄系合金を対象に初期組織を適切に制御した後、強塑性加工と熱処理を用いて超微細組織を有する板もしくは棒状のバルク材を作製することである.素材には資源的に余裕がある元素からなりリサイクル性に優れた合金を利用する。 高窒素オーステナイト系Fe-Cr-Mn合金を用いた研究では、圧延加工と焼鈍に伴う組織形成過程を主として極点図作成による集合組織形成過程の観点から追究した。その結果、窒素添加により加工集合組織が変化し、回復再結晶が著しく抑制されることが明らかになった。加工方法および加工量と集合組織形成の様相、加工集合組織と焼鈍再結晶による結晶粒微細化、および微細窒化物の均一析出の利用によって、できるだけ少量の加工で微細粒組織を作り出すための基礎データを得た。 次に、球状黒鉛鋳鉄を素材として種々な試みを行った結果、圧下量80%以上の熱間圧延が可能となり、その後の黒鉛2次析出を伴う熱処理によって微細フェライト粒組織を作り出した。再加熱温度と冷却速度の調整によってフェライト・パーライト・一方向伸張黒鉛から構成される組織も作ることができ、1mm以上の板材で従来より大幅に優れた強度・延性バランス(引張強さ 900MPa、均一伸び6%)が得られることがわかった。 その他の複合組織鋼を用いた検討も含めて、エコマテリアル、複合組織、および強塑性加工・熱処理をキーワードに1μm以下の微細組織合金創製の指針を検討している。
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