微量ドーパントを利用した新しい耐熱セラミック材料の設計

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10450254
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 佐久間 健人 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (50005500)
• キーワード: アルミナ / セラミックス / クリープ / 耐熱性 / 結晶粒界 / 偏析 / 分子軌道法

研究概要

高純度多結晶Al_2O_3セラミックスに、およそ0.05mol%のLa_2O_3,Y_2O_3,Lu_2O_3などの希土類酸化物をドープした試料を作製し、高温クリープ特性を調べた。その結果、これらの微量ドーパント添加によって多結晶Al_2O_3の耐クリープ性が著しく向上することを見出した。これらのドーパントの陽イオンは、Al_2O_3,マドリックス中にはほとんど固溶せず、結晶粒界に偏析していることが高分解能TEM-EDS分析により明らかとなった。これらの陽イオンの偏析により、クリープ変形の活性化エネルギーが2倍強にまで増加する。これらの結果をもとに、微量ドーパント添加による耐クリープ性の向上は、ドーパント陽イオンの粒界偏析によって粒界拡散あるいは粒界すベリが著しく困難になったことによるものと結論した。また、DV-Xα法を用いた分子軌道計算により、これらの陽イオンがAl_2O_3の原子間結合の変更を乞たらすことを示すとともに、定常クリープ速度が陽イオンのドーピングによるAl^<3+>陽イオンと陰イオン間のネットチャージの変化とよい相関があることを見出した。この結果は、セラミックスをはじめとする耐熱材料の高温クリープ特性を理解するうえで、原子間統合状態の理解の重要性を初めて実証したものである。

研究成果

• [文献書誌] H.Yoshida, Y.Ikuhara, T.Sakuma: "High-temperature creep resistance in lantanoid ion-doped polycrystalline Al_2O_3" Phylos.Mag.Lett.(印刷中).
• [文献書誌] H.Yoshida, T.Sakuma: "Transient creep associated with grain b'ry sliding in fine-grained single-phase materials" J.Mater.Sci.33. 4879-4885 (1998)
• [文献書誌] T.Rourel, B.Baron, P.Verdier, T.Sakuma: "Sic particle reinforced oxynitride glass:stress relaxation, creep and strain-rate imposed experiments" Acta Mater.46. 6115-6130 (1998)
• [文献書誌] A.H.Chokshi, Y.Ikuhara, J.A.Hines, T.Sakuma: "The infuluence of trace impurities on the mechanical characteristics of a superplastic 2mol% yttria stabilited zirconia" Acta Mater.46. 5557-5568 (1998)
• [文献書誌] H.Yoshida, Y.Ikuhara, T.Sakuma: "High-temperature creep resistance in rare earth-doped fine-grained Al_2O_3" J.Mater.Res.13. 2597-2601 (1998)
• [文献書誌] P.Thavovhiti, Y.Ikuhara, T.Sakuma: "Microstructural characterization of superplastic SiO_2-doped T2P with a small amount of oxide adaition" J.Am.Ceram.Soc.81. 2927-2932 (1998)