研究概要 |
種々のドーパントを添加したAl_2O_3系焼結体を作製し,高温における機械的特性を機械試験により検証した.その結果,Al_2O_3系セラミックス耐熱性改善には,イオン化数3価を取るランタノイド元素の微量添加が有効であり,4価や2価を取るドーパントは必ずしも特性向上に寄与しないことを見出した.一方,高分解能電子顕微鏡に付属の電子エネルギー損失分光法(EELS)を利用して,粒界に於ける量子構造の解析を試みた.その結果,ドーパントの粒界偏析に伴う,Al^<3+>イオン周辺の原子間化学結合状態の変化を検出することに成功した.さらに粒界電子構造を調べるためにDV-Xα法による第一原理に基づく分子軌道計算を行ったところ,EELSで測定された化学結合状態の変化は,ドーパント偏析に伴う状態密度(DOS)の変化により説明された.この化学結合状態の変化は,粒界に於ける陽イオン-陰イオン間の電子状態の変化に起因するものであり,イオン間に働くク一ロン力等の化学結合力の上昇を伴うことが判明した.以上の研究成果は,Al_2O_3セラミックスの耐熱性というマクロな現象を粒界量子構造と密接に関連づけるものであり,高温用セラミックス開発の理論的指針を得る上で極めて重要な知見である.
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