セラミックス、特に酸化物系材料から成る次世代耐熱材料を開発していく上では、耐熱性あるいは靭性のさらなる改善が必要である。本研究は、微量ドーパント添加による酸化物系セラミックスの耐高温クリープ特性向上の本性を明らかにし、新しい耐熱材料を設計する指針を明らかにすることを目的とした。その結果、セラミックスの耐熱性の向上には粒界における原子間結合力が重要な役割を果たしており、例えばAl_2O_3における粒界近傍のイオン結合性は、その高温クリープ特性を決定付ける主要因であることを初めて突き止めるに至った。また、高分解能電子顕微鏡や、EDS、EELS、STEMといった実験的分析・評価手法は、こうしたセラミックスの高温機械的特性の評価に有効であることを初めて示した。さらに定量的評価には、分子軌道計算等の第一原理的なアプローチが不可欠であり、従来に無い新しい材料設計手法であると言える。換言すれば本研究成果は、耐熱セラミックスの実用化のための材料学的手法の可能性を開拓することとなった。
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