研究概要 |
材質的に異なる要素から成る多相系材料・構造の力学特性は、構成相間に生じる非弾性変形のミスマッチに起因する内部応力によって本質的に左右される。本研究では、高温構造用として注目される金属ーセラミックス系複合材料(その非対称積層構造として特徴づけられる傾斜機能材料を含む)を対象とし、特に異相界面での拡散と粘性すべりによる応力緩和に着目して、独自の“平均場"微視力学アプローチによる高温変形挙動のモデル解析を展開するをともに、その予測を検証するための一連の実験を行って、当該材料の“微視力学的設計システム"の構築に必要な基盤を整備することを目的としている。 まず理論解析に関しては、母相と等軸の分散粒子から成る二相系を対象とし、第一ステップとして(擬弾性挙動をも包含する)“腺形"粘弾性挙動の定量的予測,すなわち微細結晶粒から成る多結晶“軟質"母相の拡散クリープ(応力指数n=1)変形に及ぼす“硬質"分散相の効果を、解析的な扱いが可能な基本問題として取り上げ、界面での拡散と粘性すべりによる応力緩和の効果を、定応力(静的負荷)および振動応力(動的負荷)条件について解析し、緩和の速度過程を定量的に把握した。さらに、当初計画では平成11年度に予定していた第二ステップ、すなわち軟質母相が“べき乗則クリープ"する場合の“非線形"粘弾性挙動についても理論的考察を進め、特に母相が合金型のクリープ挙動を示す場合(応力指数n=3)について、定応力下での非定常クリープと除荷によるクリープひずみ回復の挙動を解析的に定式化することができた。これは、一般には数値解析が必要であろうと考えていた“非線形"粘弾性挙動に対しても、見通しの良い“解析的"表現が得られたという点で、極めて有意義である。 一方、実験に関しては、硼酸アルミニウム9Al_2O_3,2B_2O_3(アルミナ系のセラミックス)強化Al系複合材料の動的擬弾性試験、Nl-Al_2O_3系傾斜機能材料の静的応力緩和試験を行い、現在一連のデータを収集中である。
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