研究概要 |
本年度は,高感度フーリエ変換赤外分光分析装置(FTIR)を組み込んだ新しいCVD装置を作製し,膜表面の化学結合状態分析を成膜中にその場観察できるようにすること,また並行して,従来のCVD装置を用いて,超はっ水性,透明性に加えて硬質性を併せ持つ薄膜を作製することを研究目的とした. 新規に製作した真空チャンバーに,設備備品として購入した複合ターボ分子ポンプと自作の高周波プラズマ源を取り付け,これまでと同等の超はっ水性と透明性を有する膜を作製することに成功した.また,有機シリコン原料とともに酸素を導入しても,全圧を高めれば超はっ水膜を作製できることがわかった,次に,このCVD装置とFTIR装置を組み合わせ,設備備品として購入した高感度赤外検出器を適用し,高感度反射法によるIR吸収スペクトルを測定できるようにした.現在,チャンバーの赤外線窓への膜堆積の問題が解決できていないため,exsituでのスペクトル測定は可能であるが,in situ測定は行えない状態にある.その場観察法による膜表面官能基の制御は,来年度の課題である. 表面に適度な凹凸を持った高純度SiO_2膜を作製後,有機シリコンプラズマ処理によって表面を疎水化し,硬質な透明・超はっ水膜を作製することを試みた.表面に凹凸を持つSiO_2膜の作製には,(1) 成膜圧力を変化させて表面凹凸を直接制御する,(2) 平滑なSiO_2膜を堆積後に化学的エッチングを行う,(3) 平滑なSiO_2膜を堆積後に機械的傷付け処理を行う,の3種類の手法を試みたが,いずれの場合も超はっ水性を示すのに必要な表面形状が得られなかった.有機シリコンプラズマ処理による疎水化には成功した.結果として,表面疎水基によるはっ水性のみが発現するため,静的水滴接触角は約100度にとどまったが,硬質性は明らかに向上した.適切な表面凹凸の実現が,来年度の課題である.
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