研究概要 |
超伝導線材の超伝導特性評価は主として,微細構造との相関に着目して行われてきたが,本格的な実用化に向けては,作製・使用中に高い電磁気学的・機械的応力場に置かれることから,力学的見地からの超伝導特性評価が必要である.本研究では,フィラメントが金属のNb-Ti複合線材ならびにA15型化合物のNb_3Al複合線材について,臨界電流および上部臨界磁場に及ぼす静的および繰り返し(疲労)負荷応力の影響の実験的把握と解析・モデリングによる定量化を目指している.今年度は,フィラメントは超伝導電流の輸送媒体であり,かつ,負荷応力下では外力の大半を担う働きをしていることに鑑み,静的および繰り返し応力下での複合線材中のフィラメントの変形・破壊挙動とその臨界電流に及ぼす影響に注目して研究を行った.主な結果は以下のように要約される. (1) Nb_3Al,Nb-Tiフィラメントの強度分布をはじめて定量評価した. (2) Nb_3Al複合線材の構造異方性を中性子回折を用いて,Nb_3Al結晶の成長方向ならびに加工・熱処理過程で形成される安定化銅の集合組織を明らかにした. (3) Nb_3Al,Nb-Tiフィラメントは単独では繰り返し応力で破壊しないが,複合材中では破壊することを,応力解析とそれに基づく繰り返し応力負荷実験で初めて明確に証明した. (4) 両線材共に,繰り返し応力下では,まずクラッド銅に疲労クラックが発生し,それが内部の銅へと進展し,フィラメントを切断しながら成長するとの疲労クラック成長メカニズムを明らかにした. (5) 両複合線材共に,繰り返し負荷応力が高,中,低で損傷の度合いは異なること,中間レベルのときメインクラック以外にも多数クラックが生じること,メインクラックは破断近くの,高サイクル数で大きく成長し始めること,これらの結果を反映して臨界電流は変化すること,を定量的に把握できた.
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