研究概要 |
多芯超伝導複合材料は作製・使用中に機械的・電磁気学的応力場に置かれ、その結果、臨界温度・臨界電流・臨界磁場(以下,超伝導特性と略称)は低下する場合が多いため,力学的見地からの高超伝導特性確保要件を把握することは課題の一つとなっている。本研究では,弾性限内で破断する脆いNb_3Alフィラメントが安定化銅に埋め込まれた超伝導複合線材について,繰り返し応力を負荷することによって,微視的力学事象の発生・成長・集積を把握し,その超伝導特性との相関を評価することを試みた。(1)応力サイクル数の増加とともに,まずクラッド銅でクラックが形成され(StageI),安定的に成長してコア部のNb_3Alフィラメントを破断させ(Stage II),不安定破壊に至る(Stage III),(2)Stage IIは疲労寿命後期で生じ、一旦生じるとメインクラックの成長は速い,(3)上記プロセスでNb_3Alフィラメント自体は疲労破壊せず,銅で生じた疲労クラックがフィラメントを切断する,(4)臨界電流はStage Iでは一定,Stage IIで減少する,(5)損傷進展は負荷最大応力に依存する:高応力では疲労クラックが成長し,低応力では一つのクラックが他のクラックに先んじて成長する,(6)(5)の結果,メインクラックから離れた部分の臨界電流は中応力域でのみ大きく低下する,ことがわかった。
|