研究概要 |
臨界温度・電流・磁場などの超伝導特性は,超伝導線材に作製・使用中に高い機械的・電磁気学的応力が負荷されると変化する。そのため,力学的見地からの高超伝導特性評価は課題の一つである。本研究では,超伝導材料工学と材料力学の学際的見地から,この課題に取り組んだ。主な成果は以下のように要約される。(1)Nb_3Al/Cu複合線材では,静的応力下では,破壊応力の約80%程度の応力レベルでフィラメントの破断が生じ,超伝導電流の有効輸送断面積の減少が主原因で臨界電流が低下することを実験と解析から示した。(2)疲労クラックは両複合線材共に,外周にクラッドした安定化銅で発生する。(3)疲労損傷を受けた複合材の破壊基準は,Ti-Nb/Cuでは正味応力基準,Nb_3Al/Cuでは応力拡大係数基準である。(4)Ti-Nb/Cu複合線材では,臨界電流と残留強度のサイクル数の増加と共にほぼ同様に変化するが,Nb_3Al/Cuでは残留強度が臨界電流に先駆けて低下する。(5)損傷は,まずクラッド銅でき裂が発生し,それがコア部に安定的に進行する。この過程で銅き裂がフィラメントに進展し,超伝導電流輸送能および荷重負担能力を低下させる。上記(3)の破壊基準を満たすと材料全体が破壊する。(6)未破断フィラメント数と臨界電流は一対一に近い対応関係がある。
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