研究概要 |
近年、急冷、CVD、メカニカルアロイング(MA)などのプロセスにより過飽和固溶体、非晶質、ナノ結晶などの新しい非平衡物質が次々と合成されているが、粉体や薄膜でしか得られないためにその物性はよくわかっていない。これら非平衡物質をそのまま固化することができれば、非平衡物質の物性を計測することが可能になり、新しい物性の発現や応用が期待される。本研究は主にMA処理によって固溶相、非晶質、ナノ結晶などの非平衡合金粉末を作製し、衝撃固化プロセスを用いてナノ・メゾスケールの不均一構造から期待される新しい物性を有する非平衡バルク合金を創製しようとするものである。 平成10年度は遊星型ボールミルを用いたMA処理による非平衡粉体の作製、その構造・組成の分析・観察実験と衝撃圧縮による固化の研究を中心に行った。物質系はタングステン系のW-Cu,W-Ag,W-Mn、鉄系のFe-Cu,Fe-W,Fe-Crなどを中心に行った。その結果、完全分離系のW-Cu,W-Agでは過飽和固溶相、ナノ結晶を含む非平衡バルク体、常温で分離系のFe-CuではBCC,FCC構造のほぼ完全固溶体からなるバルク体、常温で金属間化合物を形成するFe-Wでは過飽和固溶相、ナノ結晶を含むバルク体を作製することができた。一部の試料で硬度や電気抵抗の測定を開始し、混合焼結体とは異なる性質を示唆する結果が得られている。また、今年度は磁気特性を測る振動型磁化測定システム(VSM)の主要部分を購入し、磁気特性の計測システムの構築を開始した。平成11年度以降は、VSMと磁場下の電気抵抗測定システムを完成させ、特に新しい磁気特性が期待される遷移金属系の非平衡バルク合金について、微構造の観察と磁化特性や磁気抵抗などの物性測定を行っていく計画である。
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