研究概要 |
新素材の作製方法として,混合した素粉末や合金粉末に,大きなひずみエネルギーを与え非平衡化するメカニカルアロイング(MA)やメカニカルミリング(MM)を用いた高ひずみ付加PMプロセスが注目されている.このように粉末に強加工を施すことができる高ひずみ付加PMプロセスをオーステナイト系SUS316Lステンレス綱粉末に適用すると,オーステナイト相(FCC)と少量のフェライト相(BCC)からなる微細粒結晶粒組織が形成される^<1)>.このとき,さらなる強加工を施すと,フェライト相の割合が増加し,ほぼフェライト単相状態にすることができる。本研究では,SUS316L鋼粉末にMMを施し,結晶粒微細化とフェライト変態について詳細に検討した. SUS316L粉末は市販のPREP(Plasma Rotating Electrode Process)粉末を用いた。ボールと粉末の重量比は1.8:1とし,Ar雰囲気,回転数250rpmでアトライタによりMMを行った.機械的性質の評価にはビッカース硬さ試験を行い,組織の同定,観察には,XRD,SEM,TEM,を用いた. 3.6KsMM後のSUS316L粉末のTEM組織観察より,BCC相からなる微細結晶粒組織とFCC相からなる粗大結晶粒組織との境界が確認された.これは,MMにより,FCC→BCC変態だけでなく,結晶粒微細化も同時に起こっていることを示している.BCC粒には加工誘起マルテンサイト変態に特有な形態的な特徴が認められず、したがって、結晶粒超微細化によって、界面エネルギーが相対的に上昇した結果、フェライト変態するだけの駆動力が発生したと推定される。また、これ以外にも母相中の自由エネルギーの格子欠陥密度の上昇による増大の結果、フェライト変態を起こしたと推定される現象も確認された。
|