研究概要 |
メカニカルアロイング(MA)やメカニカルミリング(MM)は,アトライターやボールミルにより素粉末や合金粉末に大きなひずみエネルギーを加えて非平衡化する手法である.MAやMM処理を施した後,熱処理し焼結する「高ひずみ付加粉末冶金プロセス(HS-PMプロセス)」は,粉末に対する新しい加工熱処理技術であり,結晶粒を超微細化させることが可能である.工業的な観点からいえば,非平衡PMプロセスは[1]非平衡相を生成する[2]ナノスケールの微細結晶をもつ材料を作ることができる[3]成形性に優れる などの特徴を持つ.室温で高ひずみを付加させると,多数の格子欠陥が導入され,低温で原子の拡散が引き起こされる.そして,過飽和固溶体となった微結晶粒やアモルファス相などの非平衡状態から,相分解や回復・再結晶,粒成長を利用してナノスケールの超微細結晶材料を作ることが可能となる.結晶粒の微細化により材料は,強靭化するだけでなく,超塑性変形が可能となる.したがって,高ひずみ付加PMプロセスは機械的性質の向上だけでなく加工性も向上する,最も効率的で有用な加工熱処理方法であるといえる. 本研究では,以上のような特徴をもつ高ひずみ付加PMプロセスをSUS316Lオーステナイト系ステンレス鋼に適用し,組織制御を行い高強度化,強靭化を試みた。その結果、プラズマ回転電極法により作製した同粉末をMM処理し,その後HIP焼結した材料は組織が非常に微細化し、かつσ相を均一に分散させることができた。さらに、このHIP焼結体は優れた高温特性を有することを明らかにした。
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