研究概要 |
本研究では,材料中の微視的な領域における水素の存在位置と存在量を同時に観察することのできる顕微水素イメージングシステムの実用化を目的として,シンチグラフィ装置の高感度化を行うとともに,ラジオルミノグラフ法および電顕オートラジオグラフ法による実験を実施した。シンチグラフィ装置の高感度化では,現有のイメージング装置を改造して,本研究で購入した光電面冷却型ICCD検出器を取り付けた。この結果,シンチレーションやルミネッセンスの極微弱発光の光子1つ1つを検出するフォトカウンティング計測の効率が向上し,高感度化が達成された。本装置を用いた水素分布の測定は,次年度に実施予定である。ラジオルミノグラフ法の実験では,バナジウムを試料として用い,電気化学的に水素添加したときのバナジウム中の水素分布の観察を行った。その結果,試料中の水素分布は均一ではなく,水素濃度は(001)面で高く, (111)面で低いことがわかった。また,試料表面での水素濃度を測定することに成功し,水素濃度は結晶面に依存して2倍ほど異なることを示した。この水素濃度は水素添加条件で異なるが,本実験手法を用いることにより,種々の条件で水素添加したときの水素濃度と試料表面位置との関係を求めることが可能となった。電顕オートラジオグラフ法の実験では,BCC相とラーベス相の2相組織を有するバナジウム合金を試料として電子顕微鏡スケールでの水素分布の観察を行った。水素はBCC相よりもラーベス相上に多く観察されたことから,水素侵入の初期において,水素はラーベス相から優先的に侵入することが明らかとなった。
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