研究概要 |
本研究では,昨年度に高感度化を行ったシンチグラフィ装置を用いて材料中の水素分布の定量的測定を可能とするための基礎的な実験を行うとともに,ラジオルミノグラフ法による水素分布の観察実験も同時に行った.シンチグラフィ装置を用いた実験では,シンチレーションやルミネッセンスの極微弱発光の光子1つ1つを検出するフォトカウンティング計測におけるバックグラウンドの低減化を図ることにより,本装置を用いて水素分布の観察が可能となった.ラジオルミノグラフ法の実験では,バナジウムおよびバナジウム合金を試料として用い,電気化学的に水素添加したときの試料中の水素分布の観察,および水素濃度の時間変化の測定を行った.その結果,水素添加後2〜3日程度水素濃度は減少するが,水素濃度の高い領域の方が減少の割合は大きいことや,バナジウムヘの鉄の添加は水素吸収速度を増加させることがわかった.本実験手法を用いることにより,試料表面での位置を特定して,その位置における水素濃度の変化を求めることが可能となった.また,BCC相とラーベス相の2相組織を有するバナジウム合金を試料とした実験において,ラーベス相の割合が多い領域では水素濃度は時間とともに減少するが,BCC相の割合が多い領域では水素濃度は一度減少した後に増加し,ラーベス相からBCC相に水素が移動していることが明らかにされた.
|