研究概要 |
高レベル放射性廃棄物の地層処分環境におけるチタン製オーバーパックの腐食挙動を明らかにすることを目的として,還元性の模擬ベントナイト接触水中におけるチタン表面酸化皮膜の変質過程と応力腐食割れ挙動について検討し,以下のような成果を得た。 1.長期間浸漬による腐食電位変化の測定と表面皮膜性状変化の解析: 一昨年度に開始したベントナイト接触水+0〜0.5M-NaCl溶液(温度:50℃,95℃)中での浸漬腐食試験を継続し,腐食電位と表面皮膜性状の変化を調べた。その結果,腐食電位はほぼ一定であり,NaCl濃度の影響もほとんどないことが分かった。皮膜性状の中では化学組成に変化が見られ,1年半までは時間の経過と共に皮膜中のOH結合の割合が僅かずつ増加するが,それ以降の変化は少ないことが分かった。 2.カソード分極下におけるチタンの応力腐食割れ挙動の解析: ベントナイト接触水中のチタンの電位が水素発生域まで低下すると,チタン素地面での水素吸収により水素脆化が起こる可能性がある。この水素脆化と,これを起点とする応力腐食割れ挙動を知るために,模擬ベントナイト接触水(5.72mM-Na_2SO_4+7.99mM-NaHCO_3)中で定電位応力腐食割れ試験を行った。その結果,水素発生域の電位では水素脆化が原因となる割れが発生するが,地層処分の実環境に相当する電位範囲では割れの発生は起こりにくいことが推察された。
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