研究概要 |
高温材料の耐食性は表面に形成される酸化皮膜の保護性により決定される.特に,現在腐食の研究が盛んに行われているごみ焼却炉発電環境では,温度の急激な変動等による酸化皮膜の機械的な剥離が多いことが予想される.常温環境では応力腐食割れや腐食疲労等の研究にみられるように,材料の機械的性質に及ぼす腐食の影響に関する多くの研究がなされている.これらの研究では,ひずみ電極法等の電気化学的手法を併用した測定法が使われ,その腐食機構や破壊機構に関する多くの情報を得ている,本研究では,比較的低融点の硝酸塩を電解液とし,573Kの温度におけるひずみ電極システムを作製した.そして,このシステムを用いて,溶融硝酸塩中でのSUS304鋼の酸化皮膜の破壊・修復過程を調べ,その機構を明らかにすることを目的とし実験を行った. SUS304鋼の丸棒試験片を試料極とし,等モルKNO_3-NaNO_3共晶溶融塩を電解液とした.測定は,試料極を不働態電位に定電位分極し,電流が安定後,引張試験機により試料極を定ひずみ速度(20〜500%/min)で変形し,そのときの電流と荷重変化をA/D変換器を介して直接コンピューターに取り込んだ.測定はすべて573K,窒素雰囲気下で行った. ステップ状にひずみを2%づつ増加し,そのときの電流増加を測定したところ,弾性変形領域での電流増加は塑性領域に比べて極めて小さいことがわかった.また,塑性変形領域での変形停止後の電流減衰曲線(logivs.logt曲線)をみると,その傾きは-1/2〜-1の範囲にあり,ひずみ量が少ない範囲では-1/2に近く,ひずみ量が多い破壊直前の領域では-1に近い値が得られた.また,皮膜修復過程への塩化物イオンの影響を調べたが,1mol%のNaClの添加では,皮膜修復過程にはほとんど影響があらわれなかった.
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