研究概要 |
10年度は押込み深さ数10nm以下の深さのナノインデンテーション試験で種々の薄膜やガラス極表面層の変形挙動について調べ,さらに本試験法の規格化を念頭において,試験機や標準試料の問題点について考察した。またナノインデンテーションの理論的位置づけのため,連続転位モデルを用いた弾塑性材料における押込み解析も試みた。得られた成果は以下のとおりである。 1. 三角錐圧子を膜構造体に押込んだときの弾性荷重-変位曲線を有限要素解析を用いて導出した。この結果を用い,圧子先端丸みおよび下地の影響を考慮し,膜厚10nm極薄膜や実際のハードディスク用へッドスライダ保護膜の弾性常数を推測することができた。 2. 市販の3種類の硬さ標準試料のナノインデンテーション試験を荷重を0.3mNから3mNまで変えて測定した。測定結果のばらつきの変動係数は,いずれの材料においても荷重が増大すると2%から7%まで増えた。 3. 各種ガラス極表面をナノインデンテーション評価した。液晶基板ガラス表面は研磨により,局所的に損傷し若干の軟化を示す。光学ガラスにおいては,表面数nmが一様に強い軟化を示した。 4. ZrO_2の四角錐および三角錐圧子押込み試験に対する連続転位モデル解析を行ない,推定された材料の塑性域大きさ,降伏応力は文献データとの良い一致を見た。
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