研究概要 |
イオン照射表面活性化による凝着形成ができる超高真空接合加工システムを利用し,金細線とICチップ(シリコン基板),又は金細線と微細回路であるリードフレーム上の金膜間の凝着接合挙動を検討した.本研究では,初年度と言うこともあり,常温低荷重(1〜20MPa)下で生じる凝着挙動を調査した.まず,接合前に金線とSi基板(金膜)をアルゴンイオンで洗浄した.アルゴンイオン洗浄の加速電圧は2kVが適当であった. 洗浄した試料は真空度10^<-8>Paの接合室へ移動し,試作した接合治具にセットされた.電極位置に金細線をマニュピュレータで位置合わせした後,ボンディングツールで加圧接合を行った.接合圧力は,金細線の直径当たりに平均化した値としで,1〜10MPaで変化させた.当然,接合荷重を増加すると,接合強度は上昇するが,低加圧で接合すると,接合(凝着)強度が接合後の時間経過に依存することが明らかとなった.すなわち,時間経過とともに,接合強度が上昇すのである.また,Au/Siの接合より,Au/Au接合の方が,短時間で凝着強度が上昇した.この時間依存性について,空孔拡散挙動を理論的に考察したところ,常温でも界面に沿った空孔拡散が生じる可能性があり,これによって,凝着によって生じた弾性反発力(残留応力)が空孔拡散により低減し,その結果,強度上昇につながったと推察される. 高荷重下で押し当て,塑性変形を利用して行う圧着接合も実施し,そのモデル化を行った.高荷重では,接合性が,接合界面近傍の塑性流動に大きく影響されるので,その数値解析も行った.特に,ボンデイングツール形状に金細線の変形が大きく影響され,数値計算と実験とに良い一致が見られた.また,金細線の変形挙動が基板損傷の一因にもなることが示唆された.
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