従来のアルミノケイ酸塩ガラスとは異なる、新しい混合アニオンガラス及びその透明ガラスセラミックスを形成するための基礎ガラス系として、高純度Ge-S系及びGe-Ga-S系ガラスの作製法を検討し、ガラス化範囲を決定した。同ガラスの基礎物性としてガラス転移温度、密度および屈折率の組成依存性を評価した。さらに代表的希土類イオンNd^<3+>の溶解性を調べ、少量(5%)のGa及びInの添加が、Ge-S系ガラスへのNd^<3+>の溶解度を増大させることが明らかとなった。Ge-S2元系ガラス(S含有量60〜75%)の結晶化過程を調査し、初期において比較的大きな結晶(約10μm)が表面と内部に析出するため、同系の透明結晶化ガラスを作製するためには新たに組成の探索が必要であることがわかった。新しい硫化物系ガラスの基礎的な光学特性として、Ga_2S_3-La_2S_3系及びGa_2S_3-La_2O_3系ガラスの屈折率波長分散を評価し、その決定因子を検討した。同系ガラスは可視から近赤外域において比較的高屈折率(2.3〜2.5)で低分散特性を有し、この特性はGa-S結合の共有結合性とLaの高いO^<2->、S^<2->イオン配位数と関連づけられた。Ga_2S_3系ガラスの結晶化初期過程を調査し、70Ga_2S_3-30La_2O_3混合アニオンガラスを600℃付近で長時間(〜60時間)熱処理した結果、長軸0.5〜1μm、短軸約0.1μmの針状結晶がランダムな方向に多数析出した透明ガラスセラミックスが得られた。この透明ガラスセラミックス(厚さ約4mm)は、500〜700nmで透過率30〜60%を有し、可視域では母ガラスの透過率40〜70%に比べて劣るものの、2〜6μmの赤外域では70%以上と母ガラスの透過率と同等の値を持つことを示した。
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