研究概要 |
二酸化炭素は無極性であるため,油脂類の溶解・除去は可能であるが,基質に付着した水分,あるいは金属イオンなどの極性物質は溶解せず,その適用範囲に限界がある. 本研究では,逆ミセルによる手法と錯体形成の2つを対象としているが,本年度は,逆ミセルについては,動的光散乱装置の製作を行ったところで,これによる実験は次年度に行うことになる。 一方,超臨界二酸化炭素中での錯形成反応については,アルカリ金属イオンの可溶化について検討した.クラウンエーテル類を抽出試薬として,超臨界二酸化炭素を用いてNa^+,K^+イオン(対イオンはCl^-)の抽出を行った結果,わずかながら抽出されることが確認された.またクラウンエーテルの誘導体を用いて比較した結果では,無置換体の18-クラウン-6が最も高い抽出率を示した.この系にポリ弗化オクタン酸(PFOA)を添加した場合には,慣習率に著しい増加が観測された。これについては,解離したPFOAが錯体の対イオンになり,これがCO2へ強い親和性を示すためと考えられる。なお,ポリエーテル系の界面活性剤も,有力な抽出試薬となる可能性が示唆された.次年度は,抽出機構,錯体の構造決定などの検討が必要である。また錯体の超臨界二酸化炭素への分配比D(D=[complex]_<sf>/[complex]_<aq>:添字はそれぞれ超臨界相,及び水相を表す.)を実験的に求め,試薬濃度変化等によりlog D vs.log[extractant]_<sf>を解析し,通常の溶媒抽出法と同様に錯体の構造を決定できるか検討する予定である.
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