研究概要 |
超臨界CO_2は環境調和型の溶媒であり、洗浄溶媒としての利用が期待されているが,金属イオンなどの親水性物質を溶解度しないという機能的制限がある。本研究では、超臨界CO_2への親水性物質可溶化技術の開発の一つして、錯形成反応を用いた超臨界CO_2による水溶液からのアルカリ金属イオン(Na_+、K_+)の抽出を検討した。 本実験では、アルカリ金属イオンと錯形成するクラウンエーテルやグライムを配位子として選定した。しかし、これらの配位子のみでは、アルカリ金属イオンはほとんど抽出されないことが分かった。これは、生成した錯体が分極したイオン対であるため、無極性の超臨界CO_2にほとんど溶解しないためと考えられる。一方、超臨界CO_2への溶解性の高い過フッ化カルボン酸(HPFOA)を添加させたところ、いずれの配位子においても抽出率の増加が認められた。親CO_2性のPFOA・アニオンがイオン対のカウンターイオンとして作用し、イオン対の超臨界CO_2への溶解度増加に寄与しているためと考えられる。 平衡反応式による抽出機構の解析を試みたところ、カリウム・トリグライム系では、配位子が高濃度になると抽出率が減少し、低濃度域で極大値を持つことが分かった。この現象を定量的に考察するために、水相中で高次(1:2、1:3 …)のカリウムイオン-グライム錯体の生成を仮定してカーブフィットを行うと、実験値を定量的に表すことが可能であることが分かった。実験値にはややばらつきがあるものの、最大で70-80%程度のカリウムイオンの抽出が可能であることが示唆された。
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