研究課題/領域番号 |
10450287
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
中西 一弘 岡山大学, 工学部, 教授 (90026584)
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研究分担者 |
今村 維克 岡山大学, 工学部, 助手 (70294436)
崎山 高明 岡山大学, 工学部, 助教授 (70170628)
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キーワード | 付着 / 洗浄 / オリゴペプチド / 吸着等温線 / 水酸化ラジカル / ステンレス / β-ラクトグロブリン |
研究概要 |
本年度は、1)タンパク性汚れの付着特性に決定的な影響を及ぼすペプチドの付着特性の解明と2)過酸化水素/紫外線により発生する水酸化ラジカルを利用した汚れの洗浄方法の開発の2点に焦点を絞り検討した。1)の項目については、β-ラクトグロブリンのステンレス表面に対する直接の付着部位であるPeptide T5(Thr-Pro-Glu-Val-Asp-Asp-Glu-Ala-Leu-Glu-Lys)中の酸性アミノ酸(GluとAsp)の1個あるいは複数個をAlaに置換したペプチドを固相合成法により調製し、ステンレス粒子に対する付着特性を調べた。酸性アミノ酸が2個以上存在するペプチドの付着は、不可逆的な付着と可逆的な付着の2つの機構から成ることが推測された。さらに、この条件では酸性アミノ酸の数が少なくなると、不可逆的な付着量は余り変化しないが、可逆的な付着量が減少した。5個の酸性アミノ酸の4個あるいは全てをAlaに置換したペプチドはステンレス粒子に対して殆ど付着しなかった。これらの結果から、酸性アミノ酸の存在が付着に対して支配的な影響を及ぼすことが確認された。ペプチド類とステンレス平板間の相互作用をFT-IRを用いて調べたところ、酸性アミノ酸の側鎖カルボキシル基が解離した状態で付着していることが明らかにされた。過酸化水素/紫外線により発生する水酸化ラジカルを利用して、ステンレス平板に不可逆的に付着しているβ-ラクトグロブリンの脱離挙動に及ぼす種々の因子について調べると共に、条件の最適化を行った。さらに、過酸化水素による紫外線強度の減衰、ラジカルの発生・消滅速度、及びタンパク質分解速度を考慮に入れることにより、付着タンパク質の減少速度を表現するモデルを提案した。モデルから、付着タンパク質分解に最適な過酸化水素濃度が存在すること、脱離速度は紫外線強度にほぼ比例すること、固体表面上の液の深さに反比例することなどが示されたが、実験結果と良好な一致がみられた。
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