バイポーラ膜はカチオン交換層とアニオン交換層が直列に配列した構造を有しており、アニオン交換層側から0.8V以上の電圧を加えると両層の界面で水はH^+とOH^-に解離する。この現象を利用して酸とアルカリの同時製造が可能である。現在、水解離現象については第二ウィーン効果モデル、化学反応モデルが提案されてきた。さらにわれわれはこれらに対して、ツェナー効果モデルを提案した。本研究ではまずインピーダンスアナライザーを用いて直流逆バイアス電圧下で膜界面のキャパシタンスおよびコンダクタンスの測定を行い誘電率を測定した。計算によると逆バイアス電圧によって膜中間層界面の幅が広がり、その結果中間層の静電容量が減少する。実験結果は計算結果を定性的に説明できることを示している。また同様にバイポーラ膜中間層における導電率と印加逆バイアス電圧との関係もモデル計算の結果とよく一致した。さらに直流逆バイアス電流を印加した状態におけるバイポーラ膜のアドミッタンス測定に関する解析も行った。このように水の解離に関してはツェナー効果モデルでも説明できることを示している。次に同様に有機溶媒に関しても同様の実験を行った。有機溶媒中におけるプロトンの輸送は必ずしも水と同様ではないと考えられる。ギ酸、酢酸、プロピオン酸のような有機弱電解質は電圧の印加に伴いアニオンとカチオンに解離する。一方メタノール、エタノール、プロパノールに関してはメタノールのみが解離することが明らかになった。これらの電流/電圧曲線は化学反応モデルで説明できることが明らかとなった。今後ツェナー効果モデルに基づく誘電率の測定と共に、各種有機溶媒系における逆バイアス電圧下におけるイオン化の問題と解離モデルとの関係について明らかにしたい。
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