研究概要 |
アルカリ金属を添加したMoS_2は合成ガスをアルコールに転化することが知られている。しかし、そのアルコール合成活性は工業的に用いられているメタノール合成用Cu/Zn系触媒と比べて低く、同程度の収量を得るためには3倍以上の高い反応圧力を必要とする。昨年度はKを添加したMoS_2のアルコール合成活性と表面微細構造の関係を調べ、アルコールはKとMoS_2が相互作用したサイトで生成することを明らかにした。本年度は主触媒であるMoS_2を高分散させ、活性サイトの数を増やすことによりアルコール合成活性の向上を試みた。 文献に従い300m^2/gのMoS_2を調製し、それにKを添加して触媒とした。623K,5.1MPa,6000L(STP)/kg-cat/hの条件で100g/kg-cat/hのアルコール収量が得られた(K/Mo比:0.8mol/mol)。さらに、空間速度を増加させると収量は増加した(36000L(STP)/kg-cat/hで400g/kg-cat/h)。これまでに557K,20MPa,5200h^<--1>の条件で350g/kg-cat/hのアルコールが生成すると報告されている。従来法で調製した触媒のアルコール収量は反応圧力に依存し、20MPaの時の収量は5.0MPaの時の約3倍である。一方、反応圧力が5.0MPaではアルコール収量は反応温度にほとんど依存しない。これらのことを考慮すると、本研究で調製した触媒は従来法で調整した触媒よりアルコール合成活性が高く、低い反応圧力で従来と同程度か、それ以上のアルコール収量が得られる。さらに、上記の収量は同じ反応圧力でのCu/Zn系触媒のそれとほぼ同じである。なお、得られたアルコールはメタノールからブタノールまでの直鎖アルコールの混合物であった。
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