そこで本研究においては、水素のスピルオーバ一種について拡散の速度(金属-担体界面、担体表面、担体-固体酸等)、その活性化エネルギー、濃度、化学状態(電荷、原子状or分子状)に関する知見を得ることを目的とする。手法としては、プローブ反応を利用したFTIR分光法を用い、スピルオーバー水素の動的挙動の観察を行ったところ、ルイス酸点上に吸着したピリジンが、スピルオーバー水素の生成に伴い、ブレンステッド酸点に移動する挙動を見いだした。これは、スピルオーバー水素種として、ハイドライドの存在を強く示唆するものである。この結果から、触媒反応中のスピルオーバー水素種の機能として、塩基性物質による被毒的な吸着を抑制する可能性があることを示している。さらに、ゼオライト触媒で問題となっている酸点へのコーク吸着の前駆体となる物質の影響を低減することができることがわかってきた。
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