エタンの酸化的脱水素反応を層状金属オキシハライド触媒に展開し、エチレン収率が74%に達する驚異的な触媒の開発に成功した。反応には600度以上の温度を必要とするため、この触媒をさらに発展させ、高選択、長寿命の高性能実用触媒へと展開する必要がある。そのためには、より精緻な触媒構造チューニングが必要となり、本研究では、層状金属オキシハライド触媒中の金属イオン分布やハロゲンイオンとの結合距離をリートベルト解析を進めながらコントロールし、触媒活性の向上を図った。すなわち、SrBi3O4Cl3組成の基本触媒でBiの一部をLaで置換し、Laの持つ高次配位性によるハロゲンイオンの活性化、触媒高活性化を構造解析しながら進め、Laが構造中で二層構造を形成しているハロゲンイオンと特異的に接近してハロゲンイオンの電子状態を変化させで活性向上をもたらすことを見い出した。より進んだ触媒機能制御のためには、触媒反応条件下in situ XRDで観測される触媒の結合力変化の異方性や欠陥形成の情報を触媒性能と関連付け、より微細に構造チューニングし、高選択、長寿命の高性能触媒へと発展させる必要がある。これに必要な試料雰囲気可変型粉末X線回折装置を構築し、これまでにない反応ガス通過型微小円筒形充填触媒加熱方式の雰囲気可変型試料台を設計した。ただし、現在のところまだ明確な形で、触媒を構造的に微細チューニングまでには至っていない。 上記研究の発展型として、層状オキシハライドの構造単位である金属酸化物層のもつ酸素分子活性化能をもチューニングすることに成功した。すなわち、エタン酸化脱水素に活性な層状オキシハライドはいずれも金属酸化物層は二層の金属で構成される必要のあることを構造的チューニングから解明した。ビスマスで構成される金属酸化物層にランタン(La)を添加すると三層の金属酸化物層が形成されることを確認し、さらに添加されたLaは三層のちょうど中間にのみ位置し、存在可能量以上を添加して初めてLa-O-La結合が生成することを見い出した。触媒性能はこの量論域で大きく変化し、選択率の低下が起こることがわかった。選択酸化反応で完全酸化を抑制することが常に要求されてきたが、これまで明確な方法論がないままに来たが、選択性制御をも系統的に実施することができたことから、本研究の結果は今後の触媒開発に大きく資するものとなろう。
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