我々は長波長の紫外線(UV-A)照射下で生育可能な糸状性の海洋藍藻Oscillatoria NKBG091600をすでに報告している。本研究ではこの海洋藍藻のUV-A耐性機構を分子生物学的レベルで解明し、その機能を人為的に付与したUV-A耐性生物の創製を目的とした。UV-A耐陸海洋藍藻において、少なくとも5つのタンパク質がUV-A照射によって誘導されていた。誘導の顕著な60kDaのタンパク質は、熱ショックタンパク質として知られているGroELと同定された。GroELは、転写レベルで発現制御されていることが示唆された。GroELコード領域を含むgroESLオペロンを解析したところ、構造遺伝子の約200bp上流にCIRCE(Controlled Inverted Repeat of Chaperone Expression)配列が見出された。さらに、CIRCE因子の近傍にプロモーター配列、CIRCE配列と構造遺伝子との間にSOS Box様配列が見出された。さらにSOS Box様配列の近傍がmRNAの転写開始部位であることを明らかにした。さらに、groESLオペロンのうちのオペレーター領域をCAT遺伝子の上流に導入し、大腸菌においてかつ発現解析したところ、大腸菌ないにおいて、SOS Box様配列が認識され、SOS応答することが示唆された。藍藻細胞内において再確認する必要があるが、UV-A照射によるGroEL誘導は、これまでに知られているようなGroEL発現誘導ではなく、SOS応答の結果として発現誘導が起こっていることが示唆された。UV-A照射は、SOS制御を通して遺伝子発現を活性化させるスイッチング機能を果たしているものと考えられた。本研究では、UV-A耐性機構をGroELの発現誘導を中心に分子生物学的レベルにおいて解明することができた。
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