大腸菌の有機溶媒耐性に関与する遺伝子の解析

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10450308
• 研究機関: 東京工業大学
• 研究代表者: 青野 力三 東京工業大学, 生命理工学部, 教授 (30126643)
• キーワード: 大腸菌 / 有機溶媒耐性 / sox-marレギュロン / AcrAB-TolC排出ポンプ / acrAB / tolC

研究概要

rob遺伝子およびストレス応答遺伝子marAとsoxSを高発現させることによって、大腸菌の有機溶媒耐性が向上することをかつて示した。これらの転写制御因子が高発現することによって大腸菌の有機溶媒耐性が向上するのは、AcrAB-TolCポンプの高生産によることを以下の実験結果から明らかにした。
1.上記遺伝子群のいずれかを大腸菌に形質転換した場合には、sox-marレギュロン遺伝子群の発現が上昇することを確認した。2.有機溶媒耐性が向上した大腸菌突然変異株では、marオペロンのリプレッサーであるmarAにミスセンス変異が認められる。この結果、marオペロンに属するmarA遺伝子が高発現していると考えられる。本変異株においても、sox-marレギュロン遺伝子群の発現が上昇していることを認めた。3.sox-marレギュロン遺伝子の発現向上によって、大腸菌外膜のチャンネルを構成するOmpFタンパクの生産が低下する。しかし、ompF disruptantでは有機溶媒耐性は向上しない。したがって、OmpFタンパク生産低下は有機溶媒耐性に寄与していないと結論される。4.sox-marレギュロン遺伝子の発現向上によって、大腸菌細胞内かう疎水性異物を排出するAcrAB-TolCポンブを構成するタンパク質ActA、AcrB、TolCの生産が増加する。したがって、遺伝子acrA、acrB、tolCはsox-marレギュロンに属すると考えられる。5.acrA、acrB、tolCのいずれかの遺伝子が欠損した大腸菌では、有機溶媒耐性が著しく低下する。6.遺伝子acrA、acrB、tolC全てを高発現させた大腸菌の有機溶媒耐性は向上しシクロヘキサン耐性を獲得する。

研究成果

• [文献書誌] H.Asako et al: "Independence of organic solvent tolerance of Escherichia coli from OmpF leveis in the membrane" Applied and Environmental Microbiology. 65・1. 294-296 (1999)
• [文献書誌] 青野力三: "大腸菌の疎水性有機溶媒耐性機構" 化学と生物. 36・12. 760-761 (1998)
• [文献書誌] Y.Suzuki et al: "Lithocholic acid side-chain cfeavage to produce 17 keto or 22 aldehyde steroids by pseudomonas putida strain ST-491 grown in the presence of an organic solvent diphenyl ether" Bioscience,Biotechnology and Biochemistry. 62・11. 2182-2188 (1998)
• [文献書誌] Rikizo Aono: "Improvement of organic solvent tolerance level of Escherichia coli by overexpression of stress responsive genes" Extremophiles. 2・3. 239-248 (1998)
• [文献書誌] Noriyuki Doukyu et al: "Purification of extracellular cholesterol oxidase with high activity in the presence of organic solvents from Pseudomonas sp.ST-200" Applied and Environmental Microbiology. 64. 1929-1932 (1998)
• [文献書誌] Rikizo Aono et al: "Involvement of outer membrane protein TolC,a possible member of the mar-sox regulon,in maintenance and improvement of organic solvent toterance of Escherichia Coli K-12" Journal of Bacteriology. 180. 938-944 (1998)
• [文献書誌] Hideki Kobayashi et al: "Appearance of a stress response protein,phage shock protein A,in Escherichia coli exposed to hydrophobic organic solvent" Microbiology. 144. 353-359 (1998)