研究課題/領域番号 |
10450312
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
大竹 久夫 広島大学, 工学部, 教授 (10127483)
|
研究分担者 |
滝口 昇 広島大学, 大学院・先端物質科学研究科, 助手 (20304462)
池田 宰 広島大学, 工学部, 助教授 (40151295)
黒田 章夫 広島大学, 大学院・先端物質科学研究科, 助教授 (50205241)
|
キーワード | ポリリン酸 / リン資源 / 加熱処理 / バイオリン鉱石 |
研究概要 |
生物脱リン法の汚泥に見られるポリリン酸の顆粒は、汚泥の乾燥重量の数%に及ぶ。70℃、1〜2時間程度の短時間の加熱処理によって、ほとんどのポリリン酸の顆粒が、汚泥から遊離することがわかった。このリンの固まりはカルシウムを添加することによって、pHに依存せず、30分程度で自然沈降した。この沈殿のリン含量は、良質とされるリン鉱石のものよりも高く、逆にカルシウムの含量は低い事がわかった。そこで、実際の下水処理場の汚泥を対象として、加熱によるリン溶出と回収を検討した。70℃,150分の処理で汚泥に含まれるリンの約50%が溶出し、消石灰の投入によってほとんど回収できることがわかった。このことから実際の下水汚泥からも加熱によるリン回収が可能であると考えられた。しかし、ポリリン酸の溶出率が悪いことがわかったため、その原因の解明と、熱溶出方法の改良を試みた。その結果、もともとの下水に含まれる鉄や、凝集沈澱に使う鉄の影響により、ポリリン酸が溶出しなくなるとことがわかった。実際にキレート効果のあるEDTAやクエン酸を添加することにより、鉄による影響を回避できる事がわかった。これらの薬品を併用することにより、さらなるリン回収効率の向上が見込まれた。本研究で開発した方法では、約70℃程度で加熱するだけで、非常に短時間(一時間程度)の内に、ポリリン酸を含んだリンの溶出が観察できた。ポリリン酸は、pKaが極端に低いことから、カルシウムで沈殿させるときにpH調整を行う必要がないことがわかった。またポリリン酸は沈殿に必要なカルシウムの量(沈殿に含まれる量)が少ないという利点も見られた。本方法はまた、加熱処理により汚泥の20%が減量できることがわかった。すなわち、汚泥加熱処理槽、熱交換器、加熱汚泥脱水機、ポリリン酸顆粒処理槽からなるプロセスを、従来の生物脱リンシステムに組み込むことによって、汚泥減量型リン回収システムができる可能性が示された。
|