低栄養条件下でのみ増殖が可能な絶対低栄養細菌は、これまで生物工学的利用は一部を除きなされていない。この微生物は、未開であるが故に未知の可能性を秘めていると考えられる。本研究は、低栄養細菌を遺伝子資源としてとらえ、生物工学において利用価値のある遺伝子を捜し出すことを目的としている。 まず、天然界(とくに水田、活性汚泥、海洋)からレプリカ法を用い絶対低栄養細菌を分離した。これら菌株を用い、アルカリホスファターゼ、イソクエン酸リアーゼについて研究した。アルカリホスファターゼについてはOT662株について酵素学的性質を調べたところ、Km、Vm値ともに高栄養菌とは大きな差を見出し得なかった。一方、OT622株の生成するイソクエン酸リアーゼについてはYarrowia lipolyticaのKm値と比べて1/3と小さく、親和性の高いものであった。そこでOT662株からイソクエン酸リアーゼ遺伝子の分離を試みた。常法通り染色体DNAから他の菌からのイソクエン酸リアーゼの保存領域IとIIIを用いPCR増幅し、予想通り400bpよりわずかに小さい増幅断片を得た。この断片の遺伝子解析を行ったところ、396bpからなり、保存領域IIが認められたので、このものがICL遺伝子の一部であると結論ずけた。今後、この全塩基配列をクローニングし、低栄養細菌のICL遺伝子の全容を明らかにしていく予定である。
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