研究概要 |
本研究の目的は、特徴的なL字形あるいはS字形反応曲線を示す新規化学増幅反応を指示反応として用い、高性能な超微量計測法を構築することにある。分析対象物は、特に分析ニーズの高い生体物質をターゲットとする。更に、計測可能な生体物質をプローブとして免疫反応への応用を行なう。 昨年度に引き続き本年度は、分析対象物としてペルオキシダーゼを選定し、S字形反応曲線による簡易目視計測法の開発を行なった。本年度の成果を以下に記す。 1.コバルト-アゾ色素のペルオキソ-硫酸塩による自己触媒反応を利用するペルオキシダーゼの簡易目視定量法. 高価な分析機器を必要とせず、ストップウオッチと人間の目で生体成分の定量ができる可能性を示唆した。分光光度計によって指示薬の半減期(t_<1/2>)から得られた検量線の定量範囲は0.5-50μg/ml,検出限界(3σ)は0.04μg/mlの計測が可能であった。また、ぺルオキシダーゼを標識とするエンザイムイムノアッセイヘと応用し、微量のヒトインターロイキン8を計測した。 2.亜硫酸塩の過酸化水素による自己触媒反応を利用するペルオキシダーゼの計測法. この反応のpHシグナルは、pH指示薬やリトマス試験紙などで視認化が可能であり、ストップウオッチと人間の目で生体成分の定量ができることを示唆した。pHメータを利用して得られた検量線の定量範囲は、0.2-50μg/ml,検出限界(3σ)は0.2μg/mlであった。また、pH指示薬(ブロモチモールブルー:BTB))およびリトマス試験紙を用いて目視計測できることを確認した。さらに、エンザイムイムノアッセイヘと応用し、微量の腫瘍壊死因子を計測した。
|