本研究の目的は、特徴的なL字形あるいはS字形反応曲線を示す新規化学増幅反応を指示反応として用い、高性能な超微量計測法を構築することにある。分析対象物は、特に分析ニ一ズの高い生体物質をターゲットとする。更に、計測可能な生体物質をプローブとして免疫反応への応用を行なう。二ヵ年の研究期間で得られた成果は、次のようである。 1.触媒および指示薬の同時分解反応に基づくL字形曲線の利用 ヘモグロビンの分析:今回確立した方法では、ヘモグロビンが12-258μg/lの範囲で定量でき、検出限界は、8.13μg/lであった。また、変動係数は、2.05%(10回測定)であり、L宇形曲線による計測法が分析精度の向上を助長していることを証明した。本法は、既存のヘモグロビン分析法の中では、最高の感度を有する方法である。 2.自己触煤反応に基づくS字形曲線の利用 (1)コバルト-アゾ色素のペルオキソー硫酸塩による自己触媒反応を利用して、ペルオキシダーゼの簡易目視計測法を開発した。高価な分析機器を必要とせず、ストップウオッチと人間の目で生体成分の定量ができる可能性を示した。また、ペルオキシダーゼを標識とするエンザイムイムノアッセイヘと応用し、微量のヒトインターロイキン8を計測した。 (2)亜硫酸塩の過酸化水素による自己触媒反応を利用してペルオキシダーゼの計測法を開発した。この反応のpHシグナルは、pH指示薬(プロモチモールブルー:BTB)やリトマス試験紙などで視認化が可能である。また、エンザイムイムノアッセイヘと応用し、微量の腫瘍壊死因子を計測した。 以上、当初計画していた新規化学増幅反応を指示反応として用い、超微量生体物質を定量できることが実証され、十分な成果を挙げることができた。
|