高分子など絶縁材料中では、ポジトロニウム(Ps)は自由空間ないし自由空間空孔に捕捉されて消滅し、そのような場所の大きさと量に関する情報をPs寿命(τ_3)及びPs強度(I_3)の中に持っているとされる。空孔の大きさとPs寿命(τ_3)の関係は比較的良く分かつてきているが、空孔の量とPs強度(I_3)の関係については現象論的な理解にとどまっており、時に理解不足から生まれた無理な解釈がされることもある。 本研究では、Psを空孔のプローブとして用いるときの問題点を詰めていくことを目的とする。 平成10年度中は、上記の観点からいくつかの研究を行った。その中で高分子が分子を収着して空孔の数や大きさを変える様子をPsが極めて感度良く検知することを見いだしたが、同時に、材料の表面に複雑な構造がある場合には、そこに分子(本研究の場合は水分子)が堆積するキャピラリー効果を別途見いだすことも明らかにした。キャピラリー効果は"偽"の収着効果であるが、Psはこのようなものも検知することを示したのは本研究が始めてである。 このほか、Langmuir-Blodgett膜の界面をPsで検出しようという試みもしたが、これはまだ進行中である。
|