本研究最終年次では、ガス収着状態での陽電子寿命測定を継続して行った。今年度の試料はポリイミドである。これらポリイミドへのプロピレンガスの透過係数は組成によって異なることが予め測定されており、この違いが陽電子寿命測定結果とどのように対応しているか、比較検討した。その結果、プロピレンガス透過係数の大きいものは、ポジトロニウム寿命が大きい、即ち自由空間が大きいという関係があった。更に、自由空間の大きなポリイミドでは、ガス収着の後にポジトロニウム自らが自由空間を押し広げる効果が見られた。これは、収着場近傍の高分子鎖が動き易くなったことを示すものであるが、このような動き易さがガスの透過性を一層高めているものと推定される。 ガスを執着した近傍の高分子鎖が動き易くなる程度を、中性子準弾性散乱測定によって測定した。結果は解析中であるが、中性子散乱によってこの種の試みは世界的にも少ないようなので、今後継続して行っていくことが望ましい。 以上の他に、陽電子寿命測定による空孔測定を、Xe-129NMR化学シフトの結果と比較することも、これまでに比べて空孔サイズのより小さい領域とより大きい領域の試料について、継続して測定した。
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