1.導電性高分子と金属イオンとの複合化: アニオン性のスルフオニル基を導入したスルフォン化ポリアニリン(PMAS)と銅イオンとの複合化(錯体形成)および得られた複合体の電子移動反応特性について評価を行った。ラマン分光法により、PMASの窒素原子が銅(II)イオンに配位した金属錯体の形成が示唆された。また、PMASと銅イオン間に作用する静電的相互作用により、未修飾のポリアニリン(PAn)-銅イオン錯体と比較して、より安定な複合体を得ることができた。さらに、銅イオンとPMAS間の電子移動反応について検討を行った結果、PMASの還元体とCu(II)イオンおよびPMASの酸化体とCu(1)イオン間で電子移動が起きることが見いだされ、PMASと銅イオン間では両方向に電子移動反応が進行することがわかった。これらの結果より、金属イオンが導電性高分子の酸化還元反応を促進化する可能性が示された。 2.高イオン伝導性高分子ゲルイオン伝導体の開発: アクリロニトリル(PAN)系およびメチルメタクリレート(PMMA)系高分子ゲルイオン伝導体の開発を行った。PANゲルの場合、メチルメタクリレートやビニルアセテート等と共重合体化することによりイオン伝導度を2倍以上に高めることに成功した。PMMAゲルの場合、架橋構造(架橋度、架橋鎖長)を制御することにより、10^<-3>S/cm以上の高いイオン伝導度が得られた。さらに、リチウム二次電池の電解質としての応用を考慮し、リチウム金属電極界面におけるリチウムの還元析出にともなうリチウムデンドライト生成に対する抑制効果について検討を行った結果、デンドライト生成を抑制するには高分子ゲルの機械的強度を調節する必要があり、それにはPMMAゲルの架橋構造のコントロールが有効であることが見いだされた。
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