本基盤研究では、新規電子伝導体およびイオン伝導体の作製及び特性評価を行い、リチウム二次電池やバイオセンサへの適用を検討した。主な研究成果の概要を以下に記す。 (1)レドックス活性ポリアニリンと有機硫黄化合物間の電子移動反応の解析を行い、ポリアニリンへのプロトン付加およびスルフォニル基(-SO_3^-)の導入により電子移動反応速度が加速化されることを見い出した。 (2)スルフォン化ポリアニリンと銅イオンとの複合化、レドックス活性フェロセン誘導体のポリアニリン主鎖への導入および含硫黄官能基のポリピロール主鎖への導入により、導入したレドックス活性種と導電性高分子主鎖との間で速やかな電子移動反応が起こる新規レドックス活性導電性高分子を作製した。 (3)ピリジン基を有する相転位性イソプロピルポリマーゲル中に酵素活性中心であるヘミンを配位結合により導入することにより新規レドックス活性イオン伝導体を作製し、ポリマーゲルを相転位させることにより過酸化水素の還元に対するヘミンの触媒活性をコントロールすることに成功した。また、ゲルにルテニウム錯体を配位させることにより、その酸化還元活性の制御も行った。 (4)イオン伝導体におけるイオン移動に対して、メチルメタクリレートおよびアクリロニトリル系ポリマーゲルの開発に関して、共重合体の作製、架橋構造および架橋度を制御することにより、10^<-3>S/cm以上の高イオン伝導度を有するリチウム二次電池用ポリマーゲル電解質を開発した。 (5)メチルメタクリレート系ポリマーゲル電解質へのエチレンオキシドユニットの導入により、金属リチウム負極/ポリマーゲル電解質界面におけるリチウムデンドライトの生成を抑制することに成功し、金属リチウム電極を使用する高エネルギー密度二次電池用電解質として高イオン伝導性を有する高機能性ポリマーゲルの作製に成功した。
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