大型二次電池用金属超微粒子を用いる高エネルギー密度新規負極材料の開発

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10450320
• 研究機関: 東京工業大学
• 研究代表者: 脇原 將孝 東京工業大学, 工学部, 教授 (20016596)
• 研究分担者: 生田 博将 東京工業大学, 工学部, 助手 (80242270)
• キーワード: リチウム二次電池負極 / 硫酸スズ / 硫酸銀 / 硫酸銅 / 合金化

研究概要

1991年に日本で実用化されたリチウム二次電池は軽量で高エネルギー密度であり、サイクル特性が良好なため、携帯機器の普及とともに急速にその需要が高まっている。現在のところ、市販のリチウム二次電池には正極材料としてコバルト酸リチウム、負極材料として炭素材料が使用されている。この負極に使用されている炭素材料は、その構造層間にリチウムイオンを取り込むことが容易ではなく、高電流密度で充放電を行った場合に分極によりサイクル特性が低下する欠点を有している。そこで、本研究では硫酸スズを主たる負極活物質とし、これに硫酸銀、硫酸銅を添加して、サイクル特性の改善を試みた。
電極活物質としては市販の硫酸スズ(99.9%)、硫酸銀(99.9%)、硫酸銅(99.9%)を使用した。これらの電極活物質を導電材であるアセチレンブラック結着材であるPTFEと混合し電極フィルムを作成し、金属リチウムを対極に1MLiClO_4のEC+DEC溶液を電解液として用いて試験セルを組立て、定電流法により充放電試験を行った。
まず、硫酸スズのみを活物質とする電極では導電材の割合が40wt%まではサイクル特性が向上した。このとき硫酸銅あるいは硫酸銀を10mol%添加した電極は硫酸スズのみの電極と比較すると、初期容量およびサイクル特性のどちらも向上することが確認された。また、XRD測定およびサイクリックホルタンメトリーの結果、初回の充電においてまず硫酸スズが還元され金属スズの微粒子が生成し、その金属スズ微粒子とリチウムがLiSn,Li_5Sn_2,Li_7Sn_2のそれぞれの合金相を経由して充電が行われ、放電時にはほぼ可逆的に金属スズの状態まで戻ることがわかった。さらに、硫酸銀を添加したものでは金属スズと金属銀が個々にリチウムと合金を形成することも確認された。

研究成果

• [文献書誌] Dong Song: "The spinel phase LiAl_yMn_<2-y>O_4(y=0,1/12,1/9,1/12,1/3) and Li(Al,M)_<1/6>Mn_<11/6>O_4(M=Cr,Co)as the cathode for rechargeable lithium batteries" Solid State Inoics. 117. 151-156 (1999)
• [文献書誌] Masanobu NAKAYAMA: "Mixed conduction for the spinel type(1-x)Li_<4/3>Ti_<5/3>O_4-xLiCrTiO_4 system" Solid State Ionics. 117. 265-271 (1999)
• [文献書誌] Dong SONG: "Chemical Diffusion Coefficient of Lithium in LiAl_yMn_<2-y>O_4(y=0,1/9,1/6,1/3) and LiAl_<1/12>M_<1/12>Mn_<11/6>O_4(M=Cr,Co)" Denki Kagaku. 66・12. 1194-1197 (1998)
• [文献書誌] Mamoru HOSOYA: "Single Phase Region of Cation Substituted Spinel LiM_yMn_<2-y>O_<4-δ>(M=Cr,Co and Ni) and Cathode Property for Lithium Secondary Battery" Solid State Ionics. 111. 153-159 (1998)
• [文献書誌] 生田博将: "SnSO_4のリチウム二次電池負極特性" 電池技術. 10. 25-32 (1998)
• [文献書誌] Mori NAGAYAMA: "A New Anode Material SnSO_4 for Lithium Secondary Battery" Solid State Ionics. 106. 33-38 (1998)