研究課題/領域番号 |
10450322
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
工業物理化学
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
長村 利彦 静岡大学, 電子工学研究所, 教授 (90117200)
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研究分担者 |
川井 秀記 静岡大学, 電子工学研究所, 助手 (80324341)
坂口 浩司 静岡大学, 電子工学研究所, 助教授 (30211931)
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研究期間 (年度) |
1998 – 2000
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キーワード | 分子内電荷共鳴相互作用 / ニトロスチリルピリジニウム / 近赤外域の吸収 / ダイマーラジカルカチオン / LB膜 / 近赤外応答分子膜 / 超高速吸収・屈折率変化 |
研究概要 |
今年度は、主に分子内電荷共鳴相互作用と固体膜系について調べた。二つのニトロスチリルピリジニウム基をプロパン、ブタン、ヘキサンの両端に導入した化合物のアセトニトリル中での光照射で、ラジカル生成はほぼ同様に観測された。プロパン架橋のみ948nmにピークをもつ近赤外域の吸収が非常に強くなり、さらに照射直後には1742nmにピークをもつ新しい吸収も観測された。この吸収ピークは、照射後暗所で次第に短波長にシフトし、3時間後には1505nmになった。このような電荷共鳴吸収は、分子内相互作用に基づくことが確認された。これらは二つのクロモフォアが、サンドイッチ型および部分重なり型で相互作用していると考えられる。このような系で連結部の立体規制の効果を調べるために、さらにmeso-2,4-ジ置換ペンタン型で二つのニトロスチリルピリジニウム基を導入した。この定常光反応で、プロパン連結系とほぼ同様な二種類の分子内相互作用による電荷共鳴吸収スペクトルが観測されたが、その強度がかなり増加することがわかった。ダイマーラジカルカチオン形成に立体的制御効果があるといえる。 トリシアノビニル基をパラ位にもつヘキサデシルスチリルピリジニウムイオンのテトラフェニルホウ酸塩とアラキジン酸との混合系(1:1-1:4)で良好なLB膜が得られた。それに光照射すると、可視部の吸収変化に加えて、1000nmにブロードなピークが観測された。これはベンゼン溶液中で観測された882nmの電荷共鳴吸収に対応している。LB膜中でも光生成ラジカルと元のスチリルピリジニウムカチオンが相互作用していることが確認された。本系は新しい近赤外応答分子膜として期待される。このような結果は、比較的簡単な構造の分子により、光通信波長域において大きな吸収・屈折率変化を数ピコ秒の超高速で実現できることを示すものであり、今後の分子フォトニクスへの大きな寄与が期待される。
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